神社の社格・一宮・式内社とは?

歴史と格式の神社解説

神社をめぐっていると目にする「一宮」「総本社」「式内社」「別表神社」などの言葉。
でも、それぞれどういう意味で、どんな格式の違いがあるのかは意外と知られていません。

このページでは、神社の「社格」と呼ばれる分類や、一宮・式内社などの歴史的・制度的な区分について、初心者にもわかりやすく解説します。


🔰 「社格」とは?

「社格(しゃかく)」とは、簡単にいえば神社の格式や序列のことです。
時代によって分類の基準は異なりますが、主に以下の3つの時代制度で語られます。

時代制度名主な社格分類
奈良〜平安時代延喜式制度式内社・官社・国幣社など
中世一宮制度一宮・二宮・三宮…(国ごとの序列)
明治時代〜戦前近代社格制度官幣大社・国幣小社・別表神社など

🏛 式内社(しきないしゃ)とは?

■ 延喜式神名帳に載った神社

「式内社」とは、平安時代中期に編纂された**『延喜式(えんぎしき)』神名帳**という文献に記載された神社のことです。
延喜式は、国家が公認・管理する神社一覧とも言えるもので、当時の信仰の中心を示しています。

  • 全国の神社を対象に、官社(かんしゃ)として認定された2,861社が掲載
  • 現在は「式内社(旧社格)」として、歴史的価値の高い神社とされる

📌 現在でも「延喜式内〇〇神社」などの表記で残ることが多いです。


🏅 一宮(いちのみや)とは?

「一宮」とは、かつての行政区画である「令制国(りょうせいこく)」ごとに最も格式が高いとされた神社のことです。

  • 10〜11世紀ごろに成立したとされる
  • 国司(役人)がまず参拝する「筆頭神社」として扱われた
  • 多くの一宮が現在でも「〇〇国一宮」として信仰される
一宮国名(旧国)
武蔵国氷川神社(埼玉県)関東一円(埼玉・東京の一部)
上総国玉前神社(千葉県)現在の千葉県南東部
下野国宇都宮二荒山神社栃木県中部

※一宮に次ぐ「二宮」「三宮」もあるが、全ての国にあるとは限らない


🏯 総本社・分社とは?

  • 総本社(そうほんしゃ):ある神社系統の「中心・起源」となる本宮
    例)出雲大社、伏見稲荷大社、宇佐神宮
  • 分社・分祀(ぶんし):総本社から神霊を勧請し、別の場所に祀ったもの
    全国に広がる「八幡宮」「天満宮」「稲荷神社」などは分社が多数

📌 「総本社」に参拝するのは“原点をたどる旅”とも言えるよ!


🏛 明治以降の「近代社格制度」

明治政府は神道を国の宗教として体系化し、神社に格付けを行いました(国家神道)

社格説明
官幣大社天皇・皇族ゆかりの神社/国が直接管理
国幣中社・小社地域の中核的神社/国費で支援される
別格官幣社特例的な格式の神社(戦没者など)

📝 この制度は第二次世界大戦後に廃止されましたが、旧社格は今でも格式を示す目安として語られます。


🟢 現代における「別表神社」とは?

戦後、国家神道は解体されましたが、現在でも神社本庁に属する重要神社として「別表神社(べっぴょうじんじゃ)」という区分があります。

  • 全国約80社ほど
  • 大社・古社・著名な祭礼を持つ神社などが指定
  • 現在の事実上の“現代社格”

📍 例:明治神宮、靖国神社、氷川神社、香取神宮など


📚 よくある誤解と豆知識

誤解実は…
「一宮」が一番偉い?一宮は「地域内での筆頭」であって、全国的な序列ではない
「延喜式神社」は神社本庁の公認?いいえ、あくまで歴史的区分であり現在の法人とは無関係
「総本社」と書いてあれば一番古い?必ずしも創建順ではない。信仰の中心という意味で使われる

✨ まとめ|格式を知ると、神社めぐりがもっと深くなる

神社の社格は、ただの序列ではなく、歴史・地域性・信仰の広がりを知るための手がかりです。

「ここは一宮なんだ」「この神社は式内社なんだ」と知るだけで、
いつもの参拝も、数百年の時を超えた旅のように感じられるはず。